研究概要 |
本研究では,酸化物超伝導体を半溶融あるいは融点直下の温度域で加工することにより線材の作製を行い,組織を制御して,緻密で高度に配向した組織を得るための条件を確立し,J_cの改善を試みることを目的としている。 本年度は,Bi系の2212相を用いて,融点直下から溶融状態の温度である1143Kー1203Kでプレス加工を行い,組織と特性を明らかにし,配向組織を有する線材を得るための条件を調べた。プレスした試料は2212相と微細なSrーCaーCuーOおよびCuO相からなり,これらの第2相はプレス温度の上昇に伴い減少するが,プレス温度が1203Kになると溶融・凝固に伴う粗大なSrーCaーCuーO粒子が析出した。また,プレス面はどの温度でプレスした場合にもC軸配向した組織が得られ,その配向は0.95以上であった。しかしながら,走査電顕観察からは.1143Kでは表面のみ配向した組織を示し,内部では乱れた組織となっていた。一方,1173K以上では,表面および内部ともに配向した組織が得られることが分った。プレス材の密度は.プレス前では3.92Mg/m^3であるが,1143Kでのプレスにより6.20Mg/m^3に増加し,さらにプレス温度が上昇すると若干増加し,理論密度の98%が得られ,非常に緻密な組織を示した。零抵抗温度は,1143Kでは72Kであるが,プレス温度の上昇に伴い増大し,1173Kで85Kの最大値を示した後,さらにプレス温度が上昇すると減少した。70KでのJ_cは,零抵抗温度と同様な傾向を示し,1173Kで900Alcm^2の最も高い値が得られた。これは,1173Kでプレスした試料では.非常に緻密な組織を示すとともに,表面および内部とも配向し,第2相が最も少ないことり起因していると考えら,半溶融温度域での加工が組織と超伝導特性を改善するのに有効であることが分った。
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