研究概要 |
1.良質のBi_2Sr_2Ca_<nー1>Cu_nO_y単結晶薄膜のシャッタ-制御,オゾン酸化法を使ったMBEその場成長 今年度,新たに斜方晶に歪んだペロフスカイト構造のNd:YAlO_3基板を使用することにより,Bi_2Sr_2Ca_<nー1>Cu_nO_y特有の変調構造に関し,双晶構造のない薄膜のその場成長に成功した.n=1〜3相に関し,実際に実験を行い,その全てで成功した.特にバルク単結晶の得られないn=3相でT_c=82K(零抵抗温度),室温での抵抗率〜200μΩcmという良質の非双晶薄膜が得られたことは,準安定相,非平衡相の薄膜成長という観点から重要である. 2.人工格子の形成 n=1,2相の超薄膜(単位格子教層程度以下の薄い単結晶に近い薄膜)の作製を行い,X線回折強度のラウエ関数による振動,RHEED観測等から実際に超薄膜が形成されていることを確認した.またn=3相1単位格子とn=1相1,2,3,4単位格子との超格子を作製し,これもX線回折強度を計算値との一致から,超格子の形成を確認した.さらにCuO_2面が合計で6枚になるn=1とn=2相の超薄膜ヘテロ積層構造とも言うべき構造の作製を行った. 3.薄膜の物性評価及び物性研究 作製した薄膜については,超伝導と構造,膜厚との相関,面抵抗と超伝導性との相関等の基礎的研究を行った.またX線回折回折強度のラウエ関数による振動の観測により,構造の同定に非常に有効であることを示した.我々は高温超伝導体薄膜ではおそらく初めて500A^^゚を越える膜で振動を観測した.我々の薄膜はSOR光による高エネルギ-の分光測定にもたえる膜であり,測定を行った.また電子エネルギ-損失分光(EELS)による測定が薄膜,特に超薄膜,超格子,超薄膜ヘテロ積層構造の研究に有効であることを示した.
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