研究概要 |
酸化物高温超伝導体は従来の金属超伝導体に無い数々の特徴を有している。例えば、結晶粒間の界面である粒界は結晶粒と明らかに異なる電子物性を示すことから,その機能性を利用した電子デバイスへの応用が期待される。我々はY系超伝導薄膜に含まれる傾角粒界がジョセフソン接合として機能することをいち早く見出した。本研究では,SrTiO_3並びにSiバイクリスタル基板上に制御された傾角粒界を持つY系超伝導薄膜を作製し,それを用いて試作したブリッジ型ジョセフソン接合素子やdcーSQulDの特性から粒界の機能性や電子物性を追求した。 同一のY系超伝導薄膜で粒界を横断した場合とそうではない場合の臨界電流密度を比較した結果,傾角度の大きさによって臨界電流密度を制御できることが明らかになった。ブリッジ接合の直流から高周波領域にわたる基礎特性から,この接合の特性がRSJモデルで記述できること,また,マイクロ波,ミリ波帯でのヘテロダインミキシング特性もRSJモデルによるシミュレ-ション結果と良く一致することを明らかにした。 試作したdcーSQUIDの磁束応答特性を解析した結果,SQUIDを構成する二つのブリッジ接合はほぼ正弦関数的なジョセフソン接合であり,接合中に流れる電流が均一であることが確認された。 バイクリスタル基板(SriTiO_3,Si)上に成膜したY系超伝導薄膜を用いることによって傾角粒界ジョセフソン接合が人工的に作製できることが明らかになるとともに,今後は本研究で得た粒界の界面特性を利用した超伝導エレクトロニクス素子の開発が期待できる。
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