研究概要 |
YBCO超伝導体は90K以上の超伝導遷移温度を示すものの,セラミックス特有の〓さと金属に比べて著しく高い常伝導状態の比抵抗をもつ。本研究の目的は90K級の超伝導を保持しながら,金属に近い比抵抗と十分な機械的強度を持つ高温超伝導材料を開発することである。平成元年度にはYBCO粉末にAg粉末を添加して,曲げ強度150MPaの超伝導材料を得た。平成2年度にはこれにさらにZrを添加して,最高曲げ強度270MPaの高温超伝導材料の開発に成功した。この分野ではその間にMTG法などYBCOをいったん溶かしてゆっくり冷却し粒成長させる方法が開発され,大きな磁化ヒステリシスと高い臨界電流密度を持つ超伝導材料が得られるようになってきた。このような超伝導体では,微細に析出した(211)相がピン止め中心になると言われている。我々が開発したZr添加YBCOは(211)相や微細なBaZrO_3を含むので,MTG法を適用することで高い機械的強度と高い臨界電流密度を兼ね備えた超伝導材料の開発が期待出来る。平成3年度にはこれを目標に掲げ,Zr添加YBCOを部分溶解させた時の強度の向上機構を冶金学的立場から明らかにした。さらに77Kにおける磁化特性を評価することにより,出来るだけ大きな磁気ヒステリシスを持ち,臨界電流密度が高くなる熱処理条件の最適化を検討した。現在のところZr_<0.1->YBCOにおいてΔMの値が30emu/cm^3を得ている。この値はYBCOの3倍である。MTG法では大きなΔMが得られるが,結晶粒が粗大化して機械的強度が低下する。現在,この点に改良を加えて優れた強度と優れた超伝導特性を兼備した材料の開発に今一歩のところに達している。
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