研究概要 |
本研究は,溶融急冷法(ガラスセラミックス法)を用いて緻密でかつ結晶が配向しているBi‐Pb‐Sr‐Ca‐Cu‐O系(Bi系)の条伝導ガラスセラミックファイバ-を開発することを目的とする。得られた研究成果をまとめると次のようになる。 1.Bi_<2-X>Pb_XSr_2CaCu_2O_y系のガラス化範囲およびファイバ-可能領域を明らかにした。x=0.5までファイバ-を引くことが可能であった。特に,x=0.4のガラスファイバ-は通常の1段熱処理によって容易に臨界温度Tc=86Kの超伝導ファイバ-になった。Pb無添加の場合に比べて,Pbを添加することによって超伝導結晶の粒成長が促進され,しかも粒界の弱結合が大いに改善されることがわかった。 2.Bi系のガラス形成能はCuの価数に大いに依存し,特に1価の割合が多い方がよりガラス化することを見い出した。還元状態で溶融することによって,これまでガラスファイバ-を作製することが不可能であった(Bi,Pb)_2Sr_2Ca_2Cu_3O_y組成のファイバ-化に初めて成功した。ただし,熱処理中にPbが蒸発するため高温相の生成は非常に少ない。 3.ガラスからの超伝導結晶の生成機構や酸素雰囲気での熱処理による超伝導結晶の配向状態などを明らかにした。特に,780℃付近で試料内部に液相が生成し,この液相が引金となって超伝導結晶の生成が顕著になることを見い出した。結晶化機構に基づく2段熱処理法(1段目はCuの2価への酸化,2段目は超伝導結晶の生成)を提案し,実際に非常に緻密でかつ均一な超伝導結晶の集合組織を有するガラスセラミックスの作製に成功した。 4.低温相および高温相の超伝導結晶の生成はいずれも液相からの生成が主要な機構で,いわゆるintergrowthではないため,熱処理だけで結晶配向を出現させることは非常に難しいということがわかった。なお,冷間プレスの併用により結晶が配向した超伝導ガラスセラミックスの作製に成功した。
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