研究概要 |
平成3年度の研究内容は次の通りである。 (1)結晶配向性の測定 MgO(001)単結晶基板上に、MOCVD法により成膜したYBa_2Cu_3O_<7‐δ>膜(YBCO膜)の配向性をX線φ‐scan法(Schultz法)によって調べた。反射面は{113}を用いた。測定の結果、YBCO膜には、Epitaxial成長粒を大部分含む膜(方位関係:[001]YBCO//[001]MgO,[100]YBCO//[100]MgO)、および、a‐軸方位が[100]MgOとδだけ異なったMisorientation粒(方位関係:[001]YBCO//[001]MgO,[001]YBCO δ from[100]MgO)とEpitaxial成長粒の混在した膜の双方が観察された。特に、後者では、δ=27,45゚の膜が頻繁に観察されたが、これは、Mgo(001),YBCO(001)格子間での安定な擬対応格子がこれらの方位関係下で成立することと関係する。 これらの膜のジョセフソン特性測定を行った結果、Misorientation膜で優れたジョセフソンIーV特性を得られ、大傾角粒界がジョセフソン効果に寄与することが判明した。 (2)粒界構造、界面構造の観察 ジョセスソン特性を与えるYBCO大傾角(27゚,45゚など)粒界につき、TEMによるPlan‐View観察を行った結果、大傾角粒界で囲まれた結晶粒は、内部にいくつかの小傾角粒界(傾角1〜2゚)を含んでいることが判り、また、大傾角粒界の走る面内方位は、対応格子的には低Σ値の方位に非常に近いことなどが見いだされた。粒界の構造乱れの幅は1nm以下(超伝導電流の干渉距離以下)であり、この領域でジョセフソン効果が起こる。Misorientation粒、Epitaxial粒成長の膜につき、YBCO/MgO界面構造の断図観察を行った結果、Mirorientation粒/MgO界面が例外なく原子レベルで平坦なのに対し,Epitaxial粒/MgO界面では多くの原子ステップが見られ、また、多くの積層欠陥が観察された。MgO表面の原子ステップの存在の程度が、YBCO膜の配向に影響していると考えられる。
|