研究概要 |
酸化物高温超伝導体の超伝導機構の解明には大型の単結晶を用いて種々の物性を測定することが不可欠である。本研究では、酸化物超伝導体であるLa_<2ーx>Sr_xCuO_4,Nd_<2ーx>Ce_xCuO_4ならびにBi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_<11>単結晶を溶媒移動浮遊帯域法(TSFZ法)を用いて育成しようというものである。これらの酸化物はいずれも分解溶触化合物であるので、単結晶を育成するのには、これら固相の組成と平衡にある液相組成から育成させなければならない。平成元・2年度には、La_<2ーx>Sr_xCuO_4系単結晶が育成可能な液相組成を明らかにし、実際にLa_<1.86>Sr_<0.14>CuO_4の良質大型単結晶を育成し、評価した結果は、Tc=37.5Kの超伝導体単結晶であることを確認した。それら育成結晶の電気低抗が結晶軸方向によって異なることを見いだした。平成3年度には、La系結晶で固溶させるSr量をx=0,0.04,0.09,0.19と変化させた大型単結晶を育成し、超伝導特性を測定し、組成との相関関係を明らかにした。これらの研究から、高濃度のSr含有単結晶を育成するためには、溶媒相での適切なSr濃度があることが明らかになった。La_2CuO_4単結晶の酸化還元を酸素ガス、電解酸化およびアルゴンガスを用いて行い、酸素による超伝導特性の変化についても明らかにした。Nd系単結晶およびBi系単結晶育成のための液相の最適化学組成を決定し、Nd_<2ーx>Ce_xCuO_4単結晶の育成に成功した。また、育成Nd_<2ーx>Ce_xCuO_4単結晶の還元条件を明らかにし、Tc=23Kの超伝導体になることを確認した。また、中性子回折,中性子散乱,光学反射スペクトル,強磁場下での物性測定用などに育成単結晶を提供した。
|