研究概要 |
衛星を用いた観測より陸域における水循環過程を解明するための基礎研究を行ない,得られた主要な結果はつぎの通りである。 (1).地表面の蒸発効率を放射温度の観測から評価する方法や融雪量と積雪面温度と凍結深を同時に予測するモデルや裸地面蒸発モデルを開発した。(2)マイクロ波散乱実験で水分感度がえられ,裸地面蒸発の2層モデルを提示検証した。(3)水収支を考慮することにより衛星塔載も含めた3次元レ-ダによって大気の風速や山岳の影響による雨域の発生が推定できる。(4)地上レ-ダと高層気象デ-タから降雪の空間分布を規定する要因の整理と予測判定基準を示すとともに,降雪粒子の形成プロセスを明らかにした。(5)「熱い大陸上」での地面加熱,水のリサイクルや内陸への輸送や,華南の梅雨雲帯と熱帯モンス-ンとの関係が解った。(6)南米パタゴニア地域の氷河は近年後退傾向にあること,隣接する氷河でも前進後退の様子がまったく異なることが分かった。(7)地上とNOAA衛星デ-タとの対応を調べ,また無人気象観測のセンサ-などの稼動状況の現地調査をした。(8)NOAAーAVHRRデ-タを用い只見川源流部の残雪の変化を3年間にわたり解析した。地上デ-タを加え融雪出水機構が明らかになった。(9)菅平流域でアルベ-ドと土壌水分の関係を調べた。降雨により土壌水分が増加すると裸地のアルベ-ドは減少する。(10)ユ-ラシア大陸の広域積雪がモンス-ンへの影響を通して熱帯の大気海洋と中緯度偏西風循環の変動をつなぐ役割が解明された。(11)改良ペンマン法による広域蒸発散量の算定を試み,各要因変動の影響を試算した。(12)大気CO_2の炭素安定同位体比から,エルニ-ニョに関連した降水量変動による熱帯雨林生産の変動が大気CO_2濃度異常を規制していることが分った。(13)南極白瀬氷河の変動を衛星デ-タから解析した。過去34年間に3回の大きな後退があった。
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