研究概要 |
マクロリド抗生物質〔本研究の対象物質はオレアンドマイシン(1)〕は,ポリケチドを経て生合成されていることが知られているが,いかなる種類のポリケチドがいかにしてマクロリドに導かれるか,また,いかなる形で糖部分が導入されるかは明らかではない。本年度は,糖部分を舟型構造に固定したグリコシル化を検討し,2,6ージデオキシーαーグリコシドの新規合成法を開発し,1の合成に応用した。一方,Cー13位にのみCーメチル基をもつ単純なポリケチドラクトンを合成した後,ハイドライド還元を行ない,その生成物の立体構造を決定し,1のそれとの比較を行った。すなわち,まず,グリコシルドナ-として,フッ化2,6ーアンヒドロー2ーチオ糖などを選び,活性化剤の存在下,各種アルコ-ルとの反応を行った所,いずれも高収率で相当するαーグリコシド体が得られた。そこで,1の構成糖であるオレアンドロ-スに相当する2,6ーアンヒドロー2ーチオ糖を用い,1のアグリコン誘導体とのグリコシル化を行った。その結果,好収率で目的のαーグリコシド体が得られ,最終的に還元的脱硫を経て1に導かれた。グリコシルドナ-の舟型配座の重要性も示唆された。一方,Cー13位にのみCーメチル基をもつ単純化されたポリケチドラクトンを連続三環式5ー6ー7員環物質のオゾン酸化により高収率で合成した。これはX線結晶解析により,エノ-ル体として存在することが認められた。つぎに,このNaBH_4還元を行い,得られたテトラオ-ル混合物から,主生成物の一つを結晶として単離した。X線結晶解析により主体構造が明らかになったが,それは天然のオレアンドマイシン(1)から導かれるアグリコン部分(2)の構造と比較するとCー3,5,9および11位のすべての水酸基の立体配置が逆であることが明らかになった。
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