研究概要 |
本研究代表者は,散乱X線を用いた材料の画像計測法の開発を行っている。その一つは散乱X線による投影観察法(散乱トポグラフィ)であり,第二は断層観察の散乱トモグラフィである。これは,円錐スリット系によってX線の散乱位置を特定できるようにしたトモグラフィである。散乱トモグラフィでは,(1)任意の微小部分の断層観察が可能,(2)結晶構造等の組織同定が可能,等の利点を持つ。低角の際に生じる場所分解能の劣化は幾何学的に修正させる画像再構成を行う。単結晶を対象とする場合には,X線の異常透過現象に着目した。回折条件が満されていると,完全性の高い単結晶では,いわゆるボルマン効果によって,X線エネルギ-は格子画に沿って流れる。このX線を用いたCTをつくる。試料の大きさは,17Kev2×10mm,100Kevで100mmにも及ぶ。まず,再構成方式散乱トモグラフィの諸機能を維持しつつ,結晶の方位を高精度(1秒以下)で調整するゴニオメ-タのシステムの組みこみを行った。調整はすべてコンピュ-タ制御とした。 実験では,実験室線源としてMoKの17KeVのX線を用い,テスト材料として径10mmのシリコン棒を観察対象とした。この実験で,シリコン・ロッドの断層内の構造完全性の分布を示すトモグラフィの観察に成功した。これについて,平成4年3月29日 応用物理学会において,口頭発表で速報する予定である。最終目標は,以上のように,達成されたが,この研究の過程で散乱トポグラフィに関してAppl.Phys.Lett。とJ.Appl.Phys.に2つの論文を公けに出来た。ボムマン効果CTは上述の応用物理学会の後に準備する。
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