研究概要 |
次の目的を設定した:(1)超新星物質の状態方程式を現実的に求める,(2)これに基づき誕生時の熱い中性子星の諸性質を論ずる,(3)π中間子凝縮が起っている場合について(2)を行う。 (1)について:上記状態方程式を導く上で必要となる非対称核物質での核子間有効相互作用を信頼できるレベルで構成した(別掲論文No.1)。これを用い超新星物質での陽子やレプトン(電子とneutrino(ν))の混在度を有限温度のハ-トリ-・フォック方程式系を解くことにより調べた(別掲論文No.2,及び本論文を準備中)。この結果から超新星物質を現実的にしかも簡便に論じ得る1つの近似法を提案すると共に,これまで我々が用いてきた方法の妥当性を根拠づけた(別掲論文No.3)。 (2)について:この簡便法による超新星物質の状態方程式を用いて星のモデル計算を行い,熱い中性子星の特質を論じた。特に誕生時の熱い中性子星が冷却・収縮する過程で生じる回転の速まりと重力エネルギ-の放出に着目し,後者はSN1987Aのνバ-ストの特徴を説明する有力な候補となり得ることを示した。また,前者の効果は中性子星の最高速回転を議論する上で重要であり,これまでの他の論文では考慮されていない事を指摘した(別掲論文No.3,4)。 (3)について:予備的段階ではあるがπ中間子凝縮の効果が超新星物質の熱力学諸量に及ぼす影響を調べた。状態方程式を柔らかくする効果が顕著であり超新星爆発機構にとって重要である(別掲論文No.5)。爆発をどの程度起こし易くするかをみる為に数値実験を準備している。 その他:パルサ-のグリッチ現象と関連して中性子星が生まれた時どの程度の偏平度をもつ必要性があるかを検討した。その結果,ベラパルサ-だと周期(3〜6)ミリ秒のいわゆるミリ秒パルサ-として誕生した可能性があることを指摘した(別掲論文No.3)。
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