研究概要 |
超新星1987Aの超新星爆発において、さまざまな観測的証拠から、超新星の内部と外部の物質が大きく混合したことが示唆されている。この物質混合の機構として、レイリ-・テイラ-不安定性とか対流不安定性といった流体力学的不安定性が考えられる。われわれはすでに野本、茂山と協力して彼らのモデルにもとずいた2次元軸対称計算を行った。その結果、初期モデルに適当な擾乱を導入すると不安定性が発達し、観測をうまく説明することを見出した。ただここで問題になるのは、われわれおよびArnettたちの仮定したような、5ー10%もの振幅をもつ速度ゆらぎがはたして存在するかどうかである。レイリ-・テイラ-不安定性の成長率は、粘性が無視できる場合、波長が短いほど速い。もし初期に波長の短いゆらぎが存在するとそれがまず成長して、つぎにゆらぎのスペクトルの逆カスケ-ドとよばれる現象により、長い波長のゆらぎが発生する可能性がある。 我々は今年度はこのような、レイリ-・テイラ-不安定性の流体力学的性質を明らかにした。計算方法は空間3次精度の後処理OsherーChakravarthy法を採用した。空間格子は128×128と256×256の場合を調べ、レイリ-・テイラ-不安定性の発達と、初期ゆらぎの波長,振幅,密度比,空間格子数,計算精度など、物理的,計算的パラメタ-との関連を調べた。分かったことは、長波長の周期的ゆらぎの場合、ゆらぎの発達した形状は格子数に大きく依存し、フラクタル構造を示すことがある。これを我々はフラクタルフィンガリングと呼ぶ。つまり数値計算上は病的な問題である。しかし、ゆらぎの振幅に関しては、数値計算は正しい結果を与えることも分かった。結論として、逆カスケ-ド現象では、超新星で発生するレイリ-・テイラ-不安定性の起源を説明できない。やはり5%程度の初期ゆらぎを必要とする。
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