研究概要 |
HIV糖蛋白gp160の機能として,2つの機能について検討した。一つはgp160自身によるインタ-フェロン誘導で,もう一つはgp160による多核巨細胞形成である。HIV糖蛋白gp160を発現している細胞としてはU937ー2細胞にgp160を含むベクタ-でtransformした細胞U2MEー7細胞を用いた。gp160によるインタ-フェロン誘導は,産生細胞の検討に終ったが、個人差が著しく,その再現性に問題があった。次に巨細胞形成能の検討であるが,先の我々が作製したFusiom Regulation Protein(FRP)に対するモノクロ-ナル抗体をCD4^+,gp160^+U2MFー7細胞に作用させたところ,巨細胞形成が認められた。 U2MEー7細胞は自発的には巨細胞を形成しないので,抗FRP抗体がU2MEー7細胞のFRP分子に作用して,合胞体細胞を誘導したと考えられ,HIV感染による巨細胞形成を誘導する世界で初めての知見であった。続いて抗FRP抗体による巨細胞形成機構について検討した。HIVによる巨細胞形成はHIVgp160とCD4分子の相互作用で誘導されるが,抗FRP抗体により,gp160やCD4分子の発現が増強されることはなかった。 抗gp160抗体や抗CD4抗体を添加しておくと,抗FRP抗体による細胞融合は阻止された。今後,FRPの分子生物学的解析を行い,その構造を明らかにする積りである。 またFRPとHIVgp160,CD4分子との相互関係を明らかにしたい。 それらの成果の上に立って,HIVの細胞障害機構をregulateとし,HIV発症阻止の手段を開発したい。
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