研究概要 |
LPーBM 5 MuLV感染によりマウスは,リンパ節腫脹と脾腫,多クロ-ン性B細胞活性化を伴う免疫不全を発症し感染後約20週で死亡する。多クロ-ン性B細胞活性はB細胞が免疫調節機構から逸脱した結果と考えられるが,その病態や発症機構については不明な点が多い。今回,多クロ-ン性B細胞活性化の発生機構を解明するためにB細胞不全マウス(xid)を用いて解析し,興味ある知見を得たので報告したい。C57BL/6マウスならびにC57BL/6ーxidマウスにLPーBM5MuLVを感染させ,血中Ig値のELISAによる測定,リンパ球の細胞表面抗原のFACS解析と種々のサイトカインに対する応答性の解析を行いB細胞活性化の病態を解析した。LPーBM5.MuLV感染C57BL/6マウスは,感染7週目において著名なリンパ節腫脹と脾腫さらに高IgM血症と高IgG血症を認めた。感染10週目以降になるとSIgA陽性細胞の増加が腫大した脾臓やリンパ筋中に認められ,血中IgA値も著明に上昇していた。感染15週目には血中総蛋白質量の約50%を超えるM蛋白が検出された。一方,LPーBM5 MuLVを投与したS57BL/6 xidマウスは投与後7週目において脾腫リンパ節腫脹,高Ig血症を認めなかった。感染後期に認められるIgA産生の増強にはIgA産生細胞1のクラススイッチの亢進ならびにIgA産生細胞の腫瘍性増殖が考えられる。現在,IgAクラス変換因子であるTGFーβやIgA産生増強作用をもつILー5の関与について解析を進めている。LPーBMS MuLV感染による多クロ-ン性B細胞活性化にはxidマウスにおいて欠損しているB細胞亜集団もしくはB細胞に発現しているxid遺伝子が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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