研究概要 |
前年度までの研究において、我々は色素を用いたスクリ-ニングアッセイ法により,いくつかの新しい物質に選択的な抗HIV活性があることを見いだしてきた。その1つがHIVの1型にのみ有効で、その逆転写酵素をアロステリックに阻害するHEPT誘導体であり,もう一方の代表的なものはナフタレンスルフォン酸誘導体である。そこで今年度はそれらの物質をもとに、多くの誘導体を合成し,抗HIV活性の検索と作用機序の解明にとり組んだ。その結果,HEPT誘導体については,EーEPU,EーBPU,およびEーEBUーdMと名づけられた新しい物質が,どれも培養細胞におけるアッセイではそれらの50%有効値が数nMを示し,既存の抗HIV剤との比較でも最も活性の高いものの1つであることが分った。一方,毒性については,どの物質もきわめて低く,抗ウイルス活性濃度を1とした時の毒性濃度の値,すなわち治療係数は1方かそれ以上に達することが判明した。作用機序はHEPTと同じく,HIV1型の逆転写酵素に対するアロステリック阻害であり、現在はこれらの臨床応用の可能性をさぐるため,動物を用いた毒性試験,薬理学試験を実施中である。もう一方の物質であるスルフォン酸誘導体については,その基本骨格がナフタレンである物質にとどめず,種々の骨格を有するスルフォン酸化物質にその抗HIV活性検索の範囲を拡大し,アッセイを試みた。その結果、いくつかのスルフォン酸化ポリマ-,例えばポリビニルスルフォン酸,ポリスチレンスルフォン酸などに強力で選択的な抗HIV活性を有することが明らかになった。我々はまたこれらの作用機序についても検討を行ない,これらの物質がウィルスの細胞に吸着する段階を阻止することをつきとめた。
|