研究課題/領域番号 |
03222204
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
宝来 聰 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系・人類遺伝研究部門, 助教授 (40126157)
|
研究期間 (年度) |
1991 – 1992
|
研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1991年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | ヒト上科 / ミトコンドリアDNA / 塩基置換 / 分子系統樹 / 同義置換 / 非同義置換 |
研究概要 |
ヒト上科における分子進化の様相を明かにするため、ミトコンドリアDNAの4.9kbの相同領域の塩基配列を、ヒト上科4種・チンパンジ-、ピグミ-チンパンジ-、ゴリラ、オランウ-タンにおいて決定した。この領域には、11個のtRNA遺伝子、6個のタンパク質遺伝子(ND1、ND2、COI、COII、ATPase8、ATPAse6)が含まれている。既に、全塩基配列が決定されているヒトの配列と合わせて整列し、各種間の塩基間の塩基置換数を算出した。各種間における塩基配列の相同性は、チンパンジ-・ピグミ-チンパンジ-間で96%、ヒトと2種のチンパンジ-間で91〜92%、ヒトとゴリラ間で89%、ゴリラと2種のチンパンジ-間で89〜90%、オランウ-タンと他の4種間では約85%であった。種間の塩基置換数に基づいて、ミトコンドリアDNAの分子系統樹を構築した。まず、チンパンジ-とピグミ-チンパンジ-がクラスタ-し、ついで、ヒト、ゴリラ、オランウ-タンの順でクラスタ-する系統関係が得られた。さらに、6個のミトコンドリアタンパク質のアミノ酸配列を5種間で比較した結果、各タンパク質は種間のアミノ酸配列の相同性の程度によって3つのグル-プ分類された。第1のグル-プは種間でアミノ酸配列がよく保存されているもので、COIとCOIIがこれに含まれる。第2のグル-プはアミノ酸置換のよく起こっているATPase8である。第3のグル-プは前2グル-プの中間型となるもので、ND1、ND2およびATPase6が含まれる。このことは、各々のミトコンドリアタンパク質において、機能上の制約の程度がかなり異なることを示唆している。さらに各タンパク質遺伝子で同義塩基置換と非同義塩基置換の割合を比較した。ヒト、チンパンジ-、ピグミ-チンパンジ-およびゴリラを系統的に遠いオランウ-タンと比較したところ、COIおよびCOIIでは50%以上が同義置換であるのに対し、非同義置換は1〜3%と低く抑えられていることが明かとなった。一方、ATPase8では、同義置換の割合が34〜39%であるのに対し、非同義置換は21〜23%と高い割合を示した。またND1およびND2では、同義置換が24〜47%であるのに対し、非同義置換は7〜9%の間にあった。さらに、ATPase6では同義置換の割合は50〜55%であるのに対し、非同義置換は7〜10%であった。このようにミトコンドリアDNAにコ-ドされる各タンパク質遺伝子の間で塩基置換の様相をきわめて異にすることが明かとなった。
|