研究概要 |
重点領域研究のテ-マである近代化による環境変化を,産業活動がもたらした環境の改変過程の把握,地図情報化を,鉱山業を例に実施した。鉱山業を題材としたのは,他の近代産業とは異なり,この産業のみが盛衰の歴史を持ち,産業もしくは企業活動の終末までをも視座に入れて,産業活動が持つ環境改変能力とその効果を分析できるからである。具体的な調査の対象となったのは,石炭産業として長崎県高島炭鉱,硫黄鉱山として東洋一を誇った岩手県松尾鉱山の2ヶ所である。 鉱山開発などの企業活動を直接環境改変の一つの営力としてとらえる試みは,本研究が最初であり,結果としてそれぞれの鉱山とその周辺を含めた地域の,数時期の環境図を作成できたが,この調査結果は未た普遍的な価値を持つものにはなっていないと考えている。しかしながら,上記2ヶ所から得られた結果は極めて類似しており,企業活動の成長と衰退,消減の諸運程で,鉱山業に特有な環境改変過程が認められることが指摘された。それらは,1.採掘による環境改変は,採掘最盛期に最大規模に達するが,採掘条件や経済環境の悪化があっても,これらを克肥するために,より大規模な採掘や設備投資が行われ,環境改変の規模や強度が増す場合がある。2.採掘が最優先されるため,関連施設や住宅などの社会環境施設,公共施設の立地は転々とする。3.10年内外の経過を持つ経経の悪化が鉱山の衰微を招き,ついに閉山に至るが,その直前まで採掘量を最大にする努力がなされ,その結果としてより強度の環境改変(環境悪化)をもたらすことが多い。4.閉山後の跡地とその周辺には,放棄された施設やズリ,鉱毒水.土壌汚染,海岸汚染,植生の荒癈,土地所有権問題など様々な劣悪な環境が残る。これらの処理は公共機関や地方自治体の重い負担となる。
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