研究概要 |
本研究が目的とする流域水文条件の開析処理を行うにあたり,現在までの流域単位の処理に加えて,さらに地質条件,地殻変動要因および斜面方向によって,日本全国の山地をも区分した。そのために,1kmメッシュ・デ-タによって,(1)標高700m以上を抽出し,(2)第四紀火山を除き,(3)起状量300m以上を抽出した。この700mという標高値は,日本列島の高度頻度分布曲線の変曲点である。さらに,(1)〜(3)の処理では山頂小起伏面が除外されることがあるので,(4)山地域に囲まれた非山地を追加認定した。 以上の作業によって抽出された山地域のメッシュ数は,41,693個(ほぼ4万km^2に相当)であった。また,この範囲に存在する源流点数は,北海道を除く全国で3,855個であった。この山地域の面積は,通常いわれている国土面積の70%という値よりもはるかに狭いが,源流の位置さえ確定していれば流路を下流までたどることができるので,開析にあたって支障は生じなかった。 山地コ-ドは,新たにこの研究において定義したものである。従来,「◯◯山地」というあいまいな呼称があったが,ここにいう山地コ-ドは,山地間の境界を確定的に線引きし,さらに山脈の両方向の斜面(たとえば太平洋側と日本海側)をも区分するものである。山地コ-ドをコンピュ-タ・デ-タ化するには,まずすべての山地域と流路を出力し,その図上で地形図や地質図,地殻変動量図などを参照しながら手作業で山地を区分し,半自動方式でキ-入力した。 以上のデ-タ群にもとづき,任意の山体を開析する水系を抽出し,それらの縦断曲線を描画する処理系を作成した。この結果から,日本の各山地を開析する水系の特徴が検討できるようになった。今後,それらの特徴を生じる原因について,さらに考察する予定である。
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