研究概要 |
今後,地球温暖化の進行に伴って惹起される,砂漠化に対して,これの進行を阻止し,緑化を促進するために,形質転換植物の育成をめざして,研究をすすめてきた。以下のいくつかの点において進展をみた。 1.中国黄土高原において現地栽倍試験に耐えた,各種のイネ科植物から,鉄欠乏処理により,根分泌物を栽取し,ムギネ酸類の検足を行ったところ,そのうちの少くとも一種から,未知のムギネ酸類を検出した。この構造決定を行っている。 2.鉄欠乏下で起るムギネ酸生合成経路のうち,Sーアデノシルメチオニン→^^<(a)>ニコチアナミン,ニコチアナミン→^^<(b)>(ケト体)→^^<(c)>デオキシムギネ酸の酵素の性質を明らかにした。(a)については,至適pHは9.0,分子量4〜5万,pIは6付近である。(b)については,至適pHは9.0,分子量2.5〜3万,pIは4.5付近である。また(b)はcofactorとしてピリドキサルリン酸を必要とし,αーケトグルタル酸をアミノ基アクセプタ-として利用する。(c)はNADH又はNADPHを必要とする。 3.鉄欠乏下で、特異的に発現する遺伝子の検策を行っている。現在までに,3種の遺伝子の塩基配列を決定し,これらをIds1,Ids2,Ids3と命名した (Iron deficiency specific clone)。 Ids1は,植物に存在することが不明である,メタロチオネイン様のアミノ酸配列を持った遺伝子であり,その鉄欠乏下での発現の意味が今後追求されるべき課題である。 Ids2,Ids3のうちとりわけ後者は,O_2,αーケトグルタル酸,アスユルビン酸,Fe^<2+>をコファクタ-とする,dioxygenaceの遺伝子と強い相同配列を持っておりその基質が一体何であるのか,大変興味のあるところである。
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