研究概要 |
本研究は,高度に発達しつつある技術社会のなかにおいて,テレビ・ビデオ・パソコン通信・伝言ダイヤルなどの情報メディアとの接触のあリ方が,若者の価値観や生活意識の変化ーとりわけ対人意識の変容ーとどのように結びついているのかを実証的・理論的に明らかにすることを,目的としている。 私たちは,複雑な社会環境・対人環境に抗して自己像を維持する戦略モデルを構築し,それに合致するように因子分析(主成分法・バリマクス回転)×クラナタ-分析を用いて被調査者を5つの人格類型に区分した。各人格類型は,それぞれ全く異なる〈世界〉の有意味化戦略を採用していることが,デ-タからうかがえた。 さらに,人格システムの類型ごとに,メディア接触のあり方が驚くべきほど異なることが,統計的に明らかになった。〈世界〉の有意味化戦略の違いと,メディア接触の仕方の差異とが,極めて強く結びついているのである。 人格類型の差異とメディア接触のあり方の差異とがどのように結合するかは,メディアの技術的な背景のみならず,その時代の文化的な背景によって大きく左右される。こうした観点から私たちは,そりわけ1970年以降の若者文化の変遷をさまざまなメディアー少女マンガ・音楽・雑誌などーの内容分析を用いて探った。 それによれば,過去20年間の若者文化は,1973ー1976年の「新人類文化伏流期」,1977年〜1982年の「新人類文化上昇期」,1983〜1988年の「新人類文化安定期」,1989年以降の「新人類文化終息期」に区分できた。この時代区分は,高度消費社会のメルクマ-ルとなるところの,商品の消費に付随して消費される様々に分化した「〈私〉の〈物語〉」のある種の進化段階として,描きだすことができる。
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