研究概要 |
日本の政府開発援助は,供与条件のソフト化と内容の適切化が求められている。また,開発途上国がみずから特続的に発展させられるような適正技術が重要であるという議論が援助国・被援助国の双方からなされている。しかし,被援助国側からさえも過度に高度で使いこなせないような技術に対する要請ができることがあった。本研究は開発途上国における交通プロジェクトに関する援助に係わる決定機構を解明することを目的とする。 決定に関与する関係者の構成などを見る限り,開発調査,資金供与の段階でとられる日本側の公式の採択手続きでは,技術的な内容の検討は十分に重視されているとは言えない。このため,要請主義という方針と合わせて考えれば,具体的なプロジェクトの内容については,被援助国内部での決定手続きが,重要性を持ってくる。 タイの場合には,対外援助の受け入れの決定に関与するメンバ-からみると,判断基準は,経済,財務的な内容が主になっており,プロジェクトの技術的内容については,十分に審査がなされているとは限らない。フォ-マルには審査・決定機構は確立しているが,必ずしも十分に機能していないと言う点が問題である。自分で責任を負わないように,その決定を上位機関にゆだねてしまうため,最終的には援助国に対する要請に至るまで,被援助国側のプロジェクトの優先順位に関する意向が反映してこない。その対素として援助案件の採択に関する3カ年計画を作ることにしているが,この計画自体がまた同様の理由で,うまく機能しているとは言えない状態であ る。 このため,プロジェクト内容の検討,採用する技術の決定に当っては,実施機関の役割の重要性が非常に大きくなる。実施機関の内部でも,同様の問題があり,結局技術移転についての総合的な判断は公式的にも非公式的にもなされにくい状態となっている。
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