研究概要 |
今年度は中小企業,特に織維や家具といった伝統的産業における中小企業の情報化を調査した。当該産業は需要の多様化にともない多品種少量生産が不可避であるとともに,流行や季節による変化が激しく短サイクルで生産しなければならない。こうしたリスクを回避しながら、途上国との競争に負けない効率的生産システムを構築せざるをえない。 京都,大阪,隅田,泉南,福井などの繊維,静岡や大川の家具,静岡と和歌山の繊維機械,家具機械などを調査した。CAD,CAM,NC付きの機械が導入されている。デザインや設計の合理化,生産の自動化は一部では非常に進んでいる。通信技術を利用して,受注と生産の時間短縮をはかっている企業も現われている。 繊維や家具産業は零細企業群が分業して生産するが、小売りまでも組織するのは問屋や商社である。 情報化はこうした生産構造や流通関係をいくらか変化させてきように見える。生産者が小売りまでの流通を独自に糸織するケ-スも生まれてきた。これは通信技術を利用して需要動向に応じた生産が可能となったことも一因である。今後,CADなどの映像技術や通信の普及は,婦人服のようなサイクルの速い需要予想が難しい商品をオ-ダ-メイド生産へ向かわせる可能性が高い。細かい個い注文を容易にデザイン化できるとともに,この情報を通信やフロッピ-一枚で運び生産する機械が開発されているからである。また,かつては安い労働コストを求めて海外生産に切り換えた製品の一部が,情報機器の発達や高組品化・多品種化の流れの中で再び日本へ戻っている。 伝統的産業の中には情報化を受け入れることのできない体質や人的資源の不足なども見られたことを指摘しておきたい。
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