研究分担者 |
坂井 聡 古代学研究所, 助手 (20215586)
岡 秀一 東京都立大学, 理学部, 助手 (50106605)
森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 助教授 (70200459)
日下部 実 岡山大学, 地球内部研究センター, 教授 (20015770)
新井 房夫 群馬大学, 教育学部, 名誉教授 (80008119)
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研究概要 |
1.日本の歴史時代に起こった大規模な爆発的噴火16例を対象にして,大気中に放出されたイオンとハロゲンの量の見積りを行った。噴火時のガス放出量はテフラ中の斑晶中に含まれる火山ガラスと基質をなすガラスのS,Cl,Fの濃度差に,テフラ総噴出量とその重度をかけ合わせることで見積ることができる。その結果,1)ガラス包有物の化学組成は,浅間,富士,桜島などが安山岩質であるのに対し,他の火山からのものがデイサイトないし流紋岩質で,イオウ濃度が低くハロゲン濃度が高い。2)過去千年間の噴火のうち,イオウ放出量が大きかったのは,渡島駒ケ岳1640年(3.9×10^<11>gS)と十和田915年(5.0×10^<11>gS)の噴火であることがわかった。Devineらのスケ-ルによると,これらの噴火の後に,約0.3℃の全地球的規模の大気温の低下が起こったと予想される。 2.北海道における近世の噴火が自然環境に与えた影響を見積るために,苫小枚市の国有林内に産出する樹令300年もの巨木の年齢解析を行った。樹根は約1.5mも深さを異にする2ケ所から出ており,2層になっている。この差はそこに堆積した樽前aテフラ層の厚さに等しい。すなわち樽前aの噴火でテフラ層に根元を埋められた樹木は何とか枯死することを免れ,新しい地表に根を張るようになって,成長を続けたと考えられる。年輪幅を詳しく測定すると,1739年に噴火があって噴火後少なくとも2年間は成長が著しく阻害されたことがわかる。また1739年以前では,1667年の樽前b噴火では,樽前aの噴火より激しく植生を埋没・枯死させたと推定される。このことは,噴火後2年経った1669年,テフラの分布地域(被災地域)を中心に,アイヌの大規模な争乱が起こったことと符合する。 この他鬼〓アカホヤ噴火が四国の縄文期における生態系と人類社会に及ぼした影響,テフラのカタログ作成などの研究を行った。
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