研究概要 |
我々は,昨年度までにLiClとLiBrの水容液について, ^1Hー, ^7LiーNMRのスピンー格子緩和時間(T_1)とスピンースピン緩和時間(T_2)を広い温度範囲にわたって測定した。 ^7LiーNMRーT_1について,14mol/kgーLiCl水容液の水和構造から推測される ^7Li核ー ^1H核双極子相互作用による緩和と自己拡散によるブラウン運動を基礎にしたBPPの理論からリチウム水和体の自己拡散運動による緩和式 T_1^<ー1>=2/3ΔM_2〔(2τ)/(1+(ω_<Li>ーω_H)^2τ^2)+(6τ)/(1+ω_<Li>^2τ^2)+(12τ)/(1+(ω_<Li>+ω_H)^2τ^2)〕を作り,リチウムイオン水和体の運動を考察した。この式の中で,ΔM_2は拡散運動によって変調を受ける双極子相互作用の大きさで,τは運動の相関時間であり,ω_<Li>とω_Hは, ^7Li核と ^1H核に対する共鳴角周波数である。測定デ-タとの比較から,LiCl,LiBr水容液における ^7LiーNMRの緩和は,リチウムイオン水和体の自己拡散運動によって支配されていることが明かとなった。 本年平成3年度は,NMRによる拡散係数測定のためのパルス磁場勾配発生装置の製作と,昨年度までのLiCl及びLiBrの実験に続いて,LiSCN水溶液についても自作した示差熱解析装置を用いて低温における熱的性質を調べた。そして,LiSCN水溶液の8と14mol/kgの濃度の試料について ^1Hー及び ^7LiーNMRの緩和時間の温度依存性の測定からリチウムイオンの運動を考察した。
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