研究概要 |
1.分子A,Bの溶媒和状態A(Solv)m,B(Solv)n(Solv=水,アンモニア,アルコ-ル等;m,n=1,2,…)について、それらが起こす化学反応の遷移状態(AB)^<【double plus】>(Solv)m+nを直接的に観測するための実験装置を完成した。即ち、(1)運動エネルギ-を規定した負イオンクラスタ-(AB)^-(Solv)m+nの強いビ-ムを気相中に生成し、飛行時間質量分析法で溶媒分子数を選別した。さらに、クラスタ-への超低速電子の付着過程のダイナミックスについて研究を行った[J.Chem.Phys.94 243(1991)]。(2)高分解能の電子エネルギ-分析器を製作した。 負イオンクラスタ-にYAGレ-ザ-4倍波(266nm)を照射して光脱離を起こし、得られた光電子スペクトルに基づき(AB)^<【double plus】>(Solv)m+nの振動状態を解析した。2.ペニングインン化で放出される電子のエネルギ-分析を行うことで、分子の電子構造や分子軌道の空間分布について研究した。とくに衝突エネルギ-Eに関する部分イオン化断面積σ(E)の変化を測定し、粒子間の相互作用ポテンシャル、イオン化確率の異方性、電荷移動錯合体の生成機構などを検討した[J.Chem.Phys.94 2675(1991);95 918(1991)]。3.軌道放射光を利用した真空紫外光励起により、分子が負イオンと正イオンに解離する過程について研究し、正の電子親和力を持つ原子を含む多原子分子がほぼ例外なくイオン対生成反応を起こすことを明らかにし、負イオンの光解離効率曲線を測定した結果、これまで知られていなかった多くの中性超励起状態を検出し、さらにそれら超励起状態の光解離のダイナミックス(ポテンシャルエネルギ-曲面の擬似交差など)について有用な情報を得た[J.Chem.Phys.94 6003(1991);95 2398(1991);96巻、印刷中]。
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