研究概要 |
アルコ-ルの水への溶解は炭素鎖の増大とともに急に減少する。エ-テル酸素の導入により難容性アルコ-ルをかなり可溶にできる。ブタノ-ルにメトオキシ基を導入すると常温で任意に水と混合する。二種類のメトオキシブタノ-ル水溶液の超音波吸収,音速,密度測定によりアルコ-ルの構造と超音波吸収の関連について調べたところ,互いに異性体でありながら超音波特性に大きな相異があることが判明した。即ち3ーメトオキシー1ーブタノ-ルは1ーメトオキシー2ーブタノ-ルよりも水構造を安定化させ,アルコ-ルと水の複合体形成能は前者の方が大きいことも定量的に明らかにした。さらにこれまで得てきている種々のアルコ-ル水容液の結果との比較により,異性体アルコ-ルの水溶液の圧縮率最小濃度と水構造パラメ-タに一定の相関があることがわかった。以上の結果については論文として現在印刷中である。この情報を基礎にしてメトオキシ基を含む他のアルコ-ルの合成を行ない,それらの水溶液の超音波による動的物性の検討を始めた。アルコ-ルの末端にプロピル基を導入すると超音波特性は大きく変化する。プロポキシプロパノ-ル水溶液では二重緩和現象が観測された。この緩和の原因はアルコ-水溶液において一般的に見られる溶質溶媒間相互作用によるものと,疎水性相互作用が関与した分子集合体の形成崩壊過程によるものであることを超音波緩和パラメ-タの濃度依存性より明らかにした。この結果については現在報告論文としてまとめつつある。さらにこの研究を低周波領域の超音波緩和現象の解明にまで広げるために開発中の共鳴法の装置は約1MHzまで測定可能な状況にあり,セル定数の音響インピ-ダンス依存性を調べている。またアルコ-ル水容液の超音波吸収を臨界ゆらぎとしてとらえる方法との関連について検討した結果,臨界点近くでは異なる緩和メカニズムが重なって観測されていると考えられる。
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