研究概要 |
縮合多四員環ポリシランとして、ラダ-ポリシランの光もしくは熱化学的挙動を精査し、以下の知見を得た。 1.デカイソプロピルビシクロ[2.2.0]ヘキサシランの光分解。この二環式化合物に、過剰量のメタノ-ル存在下で350nm以上の波長の光を照射したところ、1‐メトキシ‐4‐ヒドロ‐1,2,2,3,3,4,5,5,6,6‐デカイソプロピルシクロヘキサンが生成した(収率87%)。なお、この生成物における立体異性体の生成比は98:2であったが、シス、トランスのどちらの異性体が主成分であるかは現在検討中である。水、フェノ-ルおよび酢酸存在下での光分解においても、メタノ-ル存在下と同様に中結合開裂に起因する生成分が良好な収率(68〜82%)で得られた。以上の結果から、1においてはケイ素ーケイ素中結合が同側結合に優先して開裂することが明かとなった。 2.ドデカイソプロピルトリシクロ[4.2.0.0^<2,5>]オクタシランの熱異性化。この化合物においてはシン体とアンチ体の二種の配座異性体が存在するが、各々を単離した。シン体をデカリン中200‐220℃に加熱すると、アンチ体への異性化がほぼ定量的に進行した。この異性化は一次の速度式にしたがい、活性化パラメ-タは次のような値が得られた。E_a=42.3kcal/mol,△H^キ=41.4kcal/mol。なお、アンチ体を同様の条件下で加熱してもシン体の生成は全く認められず、用いた条件のもとではシン体のアンチ体への片道異性化のみが生起することがわかった。炭素類縁体トリシクロ[4.2.0.0^<2,5>]オクタンでは、異性化が120‐145℃で進行し、その活性化エネルギ-は31kcal/molである。また、シン体とアンチ体の間の異性化は可逆的である。これらの傾向に比較すると、ケイ素カテネ-ト体の異性化で見いだされた上記の傾向は著しく異常である。
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