研究概要 |
5および6員環状のスルフィン酸エステルとして3Hー2,1ーベンツオキサチオ-ル1ーオキシド(1__〜a)および3,4ージヒドロー2,1ーベンツオキサチイン1ーエキシド(1__〜b)を合成し,その水溶液中での反応挙動を調べた。アルカリ水溶液中では速やかに開環して対応するヒドロキシスルフィン酸(2__〜aおよび2__〜b)を与えるのに対し,強酸中では2__〜が閉環して再び1__〜を生成することがわかった。反応速度を測定したところ,開環速度比は1__〜a/1__〜b=160,閉環速度比は2__〜/2__〜b=1.5となり,ともに5員環の方が反応性が高いことがわかった。 H_2^<18>Oを含む酸性水溶液中で1__〜aおよび1__〜bの酸素同位体交換を行い,^<18>Oで標識された基質(^<18>O含量33〜35%)を得た。この標識基質を用いてアルカリ開環(加水分解)を70〜90%進行させたのち,未反応の基質を抽出回収して^<18>O含量をマススペクトで調べた。しかし,アルカリ加水分解中には酸素同位体の交換は殆んど起っていなかった。一方,2MHCeO_4水溶液中での酸素同位体交換を調べたところ,その速度比はおおよそ1__〜a/1__〜b=1/4.7であった。開環,閉環ともに5員環エステル1__〜aの方が速いにもかかわらず,同位体交換は6員環エステル1__〜bの方が速い。この結果は,同位体交換が開環ー閉環という過程を経て起こるのではないことを強く示唆している。すなわち,超原子価中間体を経て同位体交換が起こっていると考えられる。酸性条件ではスルフィニル酸素がアピカル位に配置した中間体を生成するのに対し,アルカリ条件ではスルフィニル酸素がエクアトリアル位に配置するために同位体交換が起こらないものと理解される。
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