研究概要 |
1.自己組織化の数理の解明 システム全体がうまく協調して安定化する協調安定の数理を解明する基礎研究として,複雑な大規模システムの安定化問題をとりあげ,これを従来この分野の研究手法として知られたリアプノフ関数法,線形近似法などと異なる微分幾何学を使った方法によって研究した。この方法は線形近似のない厳密な線形化法であって,適当な座標変換と入力変換によってシステムを線形化し,その上でシステムに線形フィ-ドバックを施すというものである。この方法を使って,大規模システム全体が安定に働くために各サブシステムを線形化し,その上で安定化フィ-ドバックを行い,全体システムを安定化する方法を研究した。 2.カオスによる秩序形成のメカニズムの解明 まず,複合システムの分岐現象を起こすパラメタ-集合を求めるための計算方法を求め,次に複合システムにおけるカオスの発生,消滅のメカニズムを研究した。 まず,すべてのサブシステムから干渉があるようなシステムを考え,各サブシステムに発生しているカオスをアトラクタ-とするような各サブシステムのフィ-ドバック構造を考察した。次に各サブシステムにフィ-ドバックを施すのではなくて,各サブシステムの結合係数やその結合の正負によって,全体システムのカオスを安定化するような方法を研究した。サブシステムにカオスが発生しているとき,結合によっては全体システムにカオスが発生するが,うまく結合をえらぶと,全体システムの安定性を保つことができることを明らかにした。 これらの研究により,サブシステムにカオスが発生するとき,全体システムがカオスに引き込まれる機構が明らかになった。
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