研究概要 |
オワンクラゲの発光蛋白質エクオリンの生物発光に関して,大橋,辻は共同してセレンテラミドアナログとアポエクオリンの相互作用を追求し,従来セレンテラミドアニオンからの発光とされていた発光種が中性分子からの発光である可能性を示唆した。辻はエクオリン分子中のC末端プロリン残基を変えることで生物活性が激減すること,またトリプトファン残基が高次構造の安定化に寄与し,86Trp残基をPhe残基に置換することにより発光スペクトルが変化することを明らかにした。大橋はセレンテラジンアナログ30種の化学発光機構を解析し,中性励起分子生成が系の水素イオン濃度とアニオン種の蛍光寿命により支配されることを示した。磯部は熱帯の発光昆虫およびキノコについて調査し,タイ産発光昆虫の発光スペクトルおよび固定化ルシフェラ-ゼによりLーL反応の測定結果によりルシフェリンはホタルと同一であることを証明した。シンガポ-ルやマレ-半島に棲息する発光カタツムリの発光器から緑色蛍光物質をメタノ-ル抽出し,515nmの最大波長を示す蛍光物質を部分精製した。蛍光挙動や酸化挙動に基づきイソアロキサジン発色団を有することが明らかとなった。 斉藤は光励起種の反応性を利用して,遺伝子DNAの特定位置で光切断する分子システムを開発しているが,前年度のーGGー配列特異切断につづいてーA^<Br>uー配列で光切断する系の開発に成功した。中山はL型Caチャンネルの代表的リガンドである1,4ージヒドロピリジンにカルベン前駆体を組み込んだ新規光アフィニティラベル用試薬を合成した。この試薬が既存のものより遥かに優れた性質を示すと共に,これを用いて骨格筋Caチャンネルのリガンド結合部位がチャンネル孔の入口部であることを初めて明らかにした。
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