研究概要 |
種々の重要な生物学的機能を果たしていることが次第に明らかになってきた糖質について,それらの化学構造がどのように精密に認識されて機能の発現につながるかを明らかにすることをめざして,生物活性糖質の精密な合成,新しい活性糖質の分離,さらに糖鎖の立体構造の研究法の開発のために各研究者が下記の研究を行った. 楠本は糖脂質リポ多糖の認識についての研究を進め,強力な免疫増強活性と毒性の本体であるリピドAの新しい構造類似体を合成するとともに毒性を抑制するアンタゴニストを見出した.リピドAに糖鎖の結合したリポ多糖構造の精密合成と精製についても成果を挙げた.さらに複雑な糖質の精密合成を可能にするために糖残基水酸基の選択的保護法を改良し,その方法を応用して血液凝固タンパク質因子の特異な糖鎖を精密に合成した.小川はシアロシルTnエピト-プが集合した2量体および3量体の合成に成功し,より複雑なムチン型糖タンパク質を化学合成する手法の基礎を確立した.永井は糖脂質糖鎖が介在する生理活性に関連してモルモット皮膚の糖脂質分子種を解析した.その結果,表皮に特異的に存在する新規なエステル型セレブロシドの分離と構造決定を行い,そのケラチン合成促進能を明らかにした.目黒は先に開発したキラル重水素化法を応用して重水素化Nーアセチルノイラミン酸を含む細胞膜糖鎖モデルを合成し,糖鎖の大きく折れ曲がった立体構造をNMRスペクトルによって明らかにすることに成功した.さらに重水素化法がキラルグリセロ-ルの立体化学研究にきわめて有効であることも明らかにした.
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