研究概要 |
紅藻ソゾ属には今迄に数十種の含臭素環状エ-テルが単離,構造決定されている。これらの化合物はすべてロ-レジオ-ル類より分枝して種々の含臭素環状エ-テルに至ると推定されていたが,その経路は構造上の関連から推定されたものであり,酵素化学的証明は皆無であった。我々は酵素により生じたBr^<【○!+】>種が環状エ-テル化を引き起こすものと考えた。当面の課題として酵素ブモロパ-オキシダ-ゼのかわりに類縁酵素ラクトパ-オキシダ-ゼ(LPO)を用いた。昨年度(3E,6R,7R)ーロ-レジオ-ルよりBr^<【○!-】>,H_2O_2の存在下LPOを用いて環化生成物デアセチルロ-レンシンを生合成することを報告した。今年度は(3Z,6S,7S)ーロ-レジオ-ルを基質とし,Br^<【○!-】>,H_2O_2の存在下LPLを用いた所,ロ-レナン天然物群の生合成上の仮想的前駆体である環化生成物プレロ-レアチンが3%の収率で得られた。その後,この物質は天然のウラソゾの微量成分として単離された。プレロ-レアチンは更にLPO処理によってロ-レアチン,イソロ-レアチンおよびロ-ラレンへそれぞれ0.05%,痕跡量,および0.07%の収率で生体内変換された。次に,海藻ウラソゾに含まれる天然酵素ブロモパ-オキシダ-ゼを抽出,精し,(3Z,6S,7S)‐ロ-レジオ-ルを基質とし,Br^<【○!-】>,H_2O_2の存在下反応させた所,プレロ-レアチンが痕跡量得られ,さらにプレロ-レアチンはブロモパ-オキシダ-ゼ処理によってロ-レアチンおよびイソロ-レアチンをそれぞれ0.07%および0.05%の収率で得た。以上によってウラソゾより単離される主要な含臭素環状エ-テルの生合成経路のほヾ全域が酵素化学的に証明され,ロ-チサン系もロ-レナン系も同一の酵素ブロモパ-オキシダ-ゼによって生合成されることを証明することに成功した。
|