研究概要 |
本研究の目的は、脂質二分子膜を被覆した水晶発振子をデバイスに用いて、細胞膜から脂質膜へのたんぱく分子の移動課程ならびに、移動したたんぱく分子上で起こる分子認識を振動数変化から定量し、細胞表層での精密分子認識を具体化し、定量的に評価することにある。今年度の研究により以下のような成果が得られた。 1)直径9mm,ATカットの水晶発振子の電極上にリン脂質二分子膜をキャスト法あるいはLangmuir‐Blodgett(LB)法を用いて固定化した。脂質膜被覆発振子が緩衝水溶液や細胞培養液などのイオン強度の高い水溶液中で安定に発振するための発振回路、水晶発振子の加工等を行ない、発振子の振動数変化と重量変化の検量線を作製した。発振回路の定高知を可変抵抗にすることにより、従来塩溶液中では発振しなかったものが安定に発振できるようになり、蛋白質や細胞の水溶液中でも水晶発振子を使用できることがわかった。 2)Arg‐Gly‐Asp基を親水頭部にもつ脂質を合成し水晶発振子上に固定化し、Arg‐Gly‐Asp基に特異的に結合することが知られている細胞接着因子(IIb/IIIaたんぱく)、フィブリロネクチンなどのシグナル脂質膜への選択的移動過程を振動数変化から定量することに成功した。この結果、細胞接着因子やフィブリロネクチンは極めて選択的にArg‐Gly‐Asp基を認識できることがわかった。
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