研究概要 |
前年度に引き続いて,高い立体選択性を有する(1)ケトパント酸レダクタ-ゼ,(2)アルデヒドレダクタ-ゼの各種精製酵素について詳細な諸性質の解析を行なった。 (1)Pseudomonas maltophiliaから単離精製したケトパント酸レダクタ-ゼは,分子量30,500の同一サブユニット3〜5個で構成されたオリゴマ-酵素であり,補酵素としてはNADPHのみが有効であった。また基質特異性に関しては非常に厳密で,ケトパント酸以外には2ーケ トー3ー ヒドロキシイソ吉草酸のみがケトパント酸の1.35%の反応速度で還元されることが判明した。立体選択性も極めて高く,ケトパント酸からの生成物はDーパント酸のみ(100%ee)であった。さらに本菌よりDーパントテン酸要求性変異株を誘導した所,ケトパント酸レダクタ-ゼ活性の欠損が認められ,またDーパントテン酸非要求性の復帰変異株においては,親株同様の本酵素活性が検出された。従って本酵素は,生体内においてDーパントテン酵生合成に関与している事が判明した。(2)Sporobolomyces salmonicolorから単離精製したアルデヒドレダクタ-ゼは,(R)ー4ークロロー3ーオキソブタン酸等のβーケトエステル類に作用し,対応する(R)ーアルコ-ル(100%ee)を生成した。また本酵素は,P__ーートロベンズアルデヒドやグリセルアルデヒド等のアルデヒド類を良好な基質とし,人肝臓のアルデヒド還元酵素と相同性のあるN末端部分アミノ酸配列が認められる事から,互いに類似した酵素と考えられる。Candida macedoniensisから単離精製したアルデヒドレダクタ-ゼは,分子量45,000のモノマ-酵素でNADPH依存性であり,ケトパントテン酵エチルからの還元生成物はDーパントテン酸エチル(100%ee)であった。本菌体を触媒として本反応(基質80g/l)を行った所,モル転換率は97.2%,eeは98%以上であった。同様にケトパントテン酸メチルやケトパントテン酸イソプロピル等の不斉還元も可能であった。
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