研究概要 |
昨年度報告したキカラスウリレクチンTJAーIとTJAーIIの糖結合特異性をさらに解析するため、それぞれNeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc_<OT>(LSTーC_<OT>),Fucα1→2Galβ1→3GlcNAcβ1→3Galβ1→4Glc_<OT>(LNFーI_<OT>)を用いて平衡透析を行なった。Scatchard plot法により、TJAーIは1モル当たり4つの均一な結合部位を有し、LSTーC_<OT>に対する結合定数は8.00×10^5M^<-1>、一方TJAーIIは1モル当たり2つの均一な結合部位を有し、LNFーI_<OT>に対する結合定数は3.05×10^5M^<-1>であることが明らかになった。また両レクチンとも結合している糖鎖はManα1→6(Manα1→3)(±Xy1α1→2)Manβ1→4GlcNAcβ1→4(±Fucα1→3)GlcNAcで、植物に広く分布しているアスパラギン結合型糖鎖であった。さらにメチルーβーガラクトシドとの相互作用を^1HーNMRで解析した。TJAーIではガラクト-スのHー2,3,4,5,6、特にHー4が最も線幅が広くなることから、Hー4がレクチンの結合部位に最も接していると推定された。一方、糖結合特異性の極めて類似しているカブトムシレクチン(Allo AーII)はHー1,3,5の線幅が著しく広くなり、これはβーガラクト-スの下面がレクチンの結合部位に接していることを示しており、レクチンの糖認識機構が極めて複雑であることが示唆された。 明らかになったTJAーIとイヌエンジュレクチン(MAL)の糖結合特異性を組合せることによって、Siaα2→6Galβ1→4GlcNAcとSiaα2→3Galβ1→4GlcNAcとの識別が可能となった。一方、TJAーIIはType1H鎖とType2H鎖、Sd抗原決定基を認識しており、Type2H鎖を認識するハリエニシダ(UEAーI)とSd抗原決定基を認識するフジレクチン(WFA)を組合わせることにより、この3種の糖鎖の識別が出来るようになった。これらの識別は少糖の還元末端のトリチウム標識法を改良することにより1pmolで可能となった。
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