電子の位相情報が超伝導ク-パ-対の位相とどの様にかかわって空間的に伝えられるかを明らかにするために常伝導体と超伝導体の複合体系のコンダクタンスを調べ、以下の成果を得た。 (1)超伝導体中での常伝導電子の位相のコヒ-レンス 常伝導電子輸送の同種異試料間の相関をあらわす拡散方程式の伝播関数を、超伝導秩序が存在するとして求める。bulkな超伝導体の中で常伝導電子(準粒子)の位相の情報は失われることが結論された。 (2)超伝導転移温度に近い温度の常伝導体での常伝導電子の位相のコヒ-レンス 常伝導状態の拡散伝播関数を超伝導揺らぎの最低次の効果を取入れるダイヤグラムを用いて評価する。揺らぎによって位相コヒ-レンス長は短くなることが示された。 (3)超伝導体と常伝導体の複合細線のコンダクタンス揺らぎ 電子の位相は超伝導体との界面でアンドレ-エフ反射された空孔の位相とコヒ-レントである。そのため常伝導体のコンダクタンス揺らぎは、ユニバ-サルな値よりも大きくなることが示された。 (4)超伝導体と常伝導体の複合細線におけるアハロノフ・ボ-ム振動 アンドレ-エフ反射のために、その一部が超伝導体であるリングは1/2磁束量子を周期とするA‐B振動を示すことを導き、コンダクタンスの磁場相関関数を計算した。 (5)超伝導体と常伝導体の復合細線におけるコンダクタンス公式 散乱理論によって超伝導体常伝導体複合系の伝導過程を記述するコンダクタンス公式を導いた。
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