研究概要 |
〔1〕非局所理論の形式をさらに一般化して,1個の原子からバルク結晶までが同じ理論形式で記述されるようにした。この形式によると,物質の励起状態の放射寿命が系のサイズや形を反映するように求められる。これを真空中の2準位原子にあてはめると,QEDで知られた放射寿命が正しく導かれるので,この理論の信頼性が確かめられる。系のサイズ増大により振動子強度が増すと,放射寿命幅や非線形応答強度も増すが,そのようなサイズ増強効果や飽和の振舞いをこの理論では正しく扱うことができる。〔2〕ポンプ・プロ-ブ型の非線形分光では信号強度は,χ^<(3)>のみならずポンプ光の内部電場強度Iによる。従来はχ^<(3)>のサズ依存性のみが注目されてきたがIもサイズとともに顕著な変化を示すことを,CuC1薄膜の励起子共鳴にたいして具体的に導いた.Iのサイズ変化は共鳴的に起こるので,χ^<(3)>のサイズ依存性と合わせて考えると,χ^<(3)>のサイズ依存性が飽和する直前に非線形信号強度が特に大きくなるサイズの存在することが期待される。CuC1薄膜の場合,これは250A付近の膜厚に対して起こることが計算により示された。〔3〕放射寿命のサイズ・形状依存性はこれまで長波長近似の範囲か1または2次元の無限結晶についてのみ調べられただけで,非局所性の顕在化による長波近似からのはずれや飽和については何も解っていない。この問題を非局所理論の応用として考えられるため,共鳴準位を1つもつような半導体微粒子を1列に並べた系の共鳴散乱を計算して,共鳴ピ-クの幅から放射寿命のサイズ依存性を求めた。その結果,長波長近似からのはずれは波長の1/10程度のサイズから顕著になり,波長程度のサイズでは寿命幅のサイズ増大は飽和することが解った。
|