研究概要 |
本研究グル-プは金属タンパク質が示す特異的化学反応性と、活性中心における金属イオンの配位構造や、これをとりまく分子環境との関係を動的状態も含めて検討し、そのモデルとなる金属錯体を化学的に構築することを目的として研究を進めた。金属タンパク質が機能を遂行する途中の段階の金属配位構造をとらえ、その反応メカニズムを構造化学的に記述する手法として、時間分解共鳴ラマン分光測定系を製作した。それは2台のパルスレ-ザ-,トリプル分光器,ダイオ-ドアレイ検出器からなるもので、動的状態にある分子の振動スペクトルを10ナノ秒の時間分解能で与える。その性能と実験の仕方については、平成3年11月にワ-クショップを開催して説明した。この装置を用いてポルフィリンの励起一重項と励起三重項の共鳴ラマンスペクトルを測定することに成功し、国際誌に発表した。本研究班で対象とした金属タンパクのうち、チトクロム酸化酵素については吉川が単結晶のX線回折を進め、北川が共鳴ラマン分光法で酸素活性化のメカニズムやCu_Aの配位環境を明らかにした。モデルの化学的構築という観点から、木村はいくつかのZn酵素の反応を[12]aneN_3マクロサイクルを使って再現し、亜鉛の配位環境と化学的性質や反応性との関係を明らかにした。植物の光合成系IIに特徴的なO_2発生はMnクラスタ-で触媒されていることが知られているが、その触媒部位を化学的に構築する目的で、大川はMnの4核クラスタ-錯体をマクロサイクル配位子で合成した。また鈴木は同じ目的のためにdi‐μ‐oxo錯体で4核クラスタ-を合成し、水を酸化する機能モデルの構築に向って一歩一歩前進した。この他に、北川グル-プは共鳴ラマン分光の実験を通して、本重点研究の班員の鈴木(阪大教),森島(京大工),石村(慶大医),吉川(姫工大理),堀(阪大基礎工),鈴木(金沢大理),諸岡(東工大資源研),青山(長岡技科大)らに協力し、共同研究を進めた。
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