研究概要 |
本研究ではtRNAを主な材料として,RNAの水溶液における立体構造あるいは動的な構造を解析するために,RNAにおける安定同位体標識NMRの手法を開発することを目標としている.本年度は,まず効率的な ^<13>C標識の手法の追求,および ^<15>N標識tRNAについての核磁気共鳴の手法の開発を行なった. 1.リボ-スプロトンのシグナルの分離をめざした ^<13>C標識 申請時においては,リボ-スの1′の選択的標識をリボ-スー1ー ^<13>Cを用いて行なうことを計画していた.しかしながら,この方法では標識率が低いことが分かったので,グルコ-スー2ー ^<13>Cを用いる方法を考案し検討した.グルコ-スー2ー ^<13>Cを含む最少培地で大腸菌(A19株)を1L培養し,得られた菌体よりRNAを抽出した.これを酵素によってヌクレオシドにまで分解し,4種のヌクレオシドを単離精製した. ^<13>C核とのスピン結合による分裂パタ-ンから,リボ-スの1′位が80%の効率で標識されたことが確認できた.したがってグルコ-スー2ー ^<13>Cによる標識は有効であることがわかった. 2.イミノプロトンのシグナルの分離をめざした ^<15>N標識 塩化アンモニウムー ^<15>Nを加えた合成培地を用いて50Lの培養を行ない,得られた大腸菌菌体から約500mgのtRNA粗分画を得た.これを,2段階のイオン交換クロマトグラフィ-によって精製し,およそ4mgのtRNA^<G1u>を得た.この[ ^<15>N]tRNA^<G1u>の500MHz ^1HーNMRスペクトルを測定し, ^<15>N核とのスピン結合によるイミノプロトンのシグナルの分裂から,90%以上が標識されたことを確認した.さらに,2次元 ^1Hー ^<15>N相関スペクトルを測定した結果,A・UおよびG・C塩基対に由来するイミノ窒素( ^<15>N)の化学シフトは互いに10ppmほど異なっており,容易に区別できることが分かった.
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