研究概要 |
我々は、既に嶋田らによって発見されたオキセタノシンの炭素環類縁体“炭素環オキセタノシン(A;1a,G;1b)"の合成及び試験管内、動物試験での抗ヘルペスウイルス作用を報告した。今回、1bの動物試験の結果を踏まえて角膜ヘルペス患者に対する臨床試験を実施したところ1bの0.1%点眼液は、角膜ヘルペスの基本型である樹枝状角膜炎の対象患者、5例7眼を全て治癒した。また、副作用は全く認められなかった。炭素環オキセタノシンの有望性に着目し、この研究を2つの方向へ発展させた。1つはヌクレオシド系抗生物質“デコイニン"を参考にした研究である。即ち、1aや1bから6行程を経て9ー(ヒドロキシメチルメチレンシクロブチル)プリン類(4種類)を含成した。これらの1つにB型肝炎ウイルスに対しAraーAと同じくらい有効なもを見い出した。他の1つは1aや1bを含むオリゴデオキシヌクレオチドの合成で、アンチセンス作用を的指したものである。この目的を達する障害は、1a、1bがもつ2つの1級水酸基を選択的に保護することである。そこで2,3ービスヒドロキシメチルー1ーシクロブタノ-ルから3行程で3ー0ーベンゾイル化し、さらに2行程で3ー0ーベンゾイルー2ー0ートリチルー1ー0ートシル体を得た。生成物をプリン類と反役させて3ー0ーベンゾイルー2ー0ートリチル炭素環オキセタノシン(A;2a,G;2b)を合成した。2a,2bを塩基で処理して得た生成物,2ー0ートリチル体をリン酸化して炭素ボオキセタノシンのモノヌクレオトドユニットを合成した。このものは炭素環オキセタノシンを含むオリゴデオキシヌクレオチド類の合成に欠くことのできないものである。
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