研究概要 |
1.目的 光学利得の非線形性は半導体レ-ザの直接変調周波数の究極的上限を決定するとともに,レ-ザや進行波型増幅器における非縮退4光波混合効果をもたらす。しかしながら,非線形利得の物理的起源は必ずしも明確になっていない。本研究では,非線形利得の起源解明を目的とし,その有力候補であるスペクトルホ-ルバ-ニングとキャリアヒ-ティングの両者を考慮した理論を構築し,進行波型増幅器における非縮退4光波混合効果の解析を行うと共に実験的険討を行った。 2.理論の構築 半導体レ-ザ-における非線形光学現象を理解するためには,光と相互作用する電子系の挙動の正確な記述が肝要である。特に,半導体中の非平衝電子系は,バン内電子数の変化を伴うナノ秒のバンド問緩和((1))と電子数を保存するサブピコ秒のバンド内緩和((2))を示す。さらに,レ-ザ中のキャリア温度は格子への熱緩和((3))のレ-トが有限であるために格子温度とは異なっている。4光波混合効果や,縦モ-ド間の競合など周波数の異なる複数の光波が存在する場合には,光強度のビ-トによってキャリアの脈動が誘起される。本研究では,時定数と性格を異にする上記3つの緩和過程を考慮することにより,(1)キァリア密度脈動,(2)レ-ザ遷移準位の占有数の脈動,(3)キャリア温度脈動の3種の脈動の統一的記述に初めて成功した。キャリアの脈動は光波の一つと結合して他の光波の周波数に分極を生じ,これが4光波混合効界やモ-ド間結合を引き起こす。 3.非縮退4光波混合効果 スペクトルホ-ルバ-ニングとキャリアヒ-ティングの双方を考慮した上記新理論により4光波混合効果の解析を行った。両者の寄与は質的に異なる離調特性を持ち,従って,非縮退4光波混合の測定は非線形利得の起源解明及び直接変調周波数の上限を知るために有効な手段であることが明らかになった。
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