研究概要 |
本年度は,自然科学・語学教育などを対象として,教材知識における対象世界モデルの表現の問題,ならびに対象世界モデルを用いた問題解決について検討し,以下に挙げる成果を得た. (1)高校化学において扱われる概念・知識の分類整理:市販の高校化学参考書・問題集などをもとに,化学系における物質・構造・作用・変化等を表す様々な概念と,それらの関係を表す知識について,どの様な観点から構成されているかに着目して事例研究を行った.その結果高校化学では,空間的・時間的なスケ-ルにより,一つの対象に複数の概念が対応することが確かめられた(例えば物質と,それを構成する原子・分子など). (2)高校化学の対象世界モデル表現とその利用:(1)に述べた事から,対象を様々なスケ-ルで捉えうる対象世界モデルの表現法を提案し,モデル上でのシミュレ-ション及び計算問題の求解への利用方法を示した. (3)英作文演習知的CAIにおける英文法モデル:英作文教育において学生との柔軟な対話,学生の理解状態のモデル化等に必須な英文法モデルの表現法を提案した.これは一種の対象世界モデルであると考えられるが,上記の自然科学系教科におけるモデルとは異なり,実世界を対象としないため,概念形成・知識獲得支援における対象世界モデルの役割についての一般的な知見を得る上で,極めて興味深い成果である. (4)システムの試作:以上の成果に基づいて,高校化学の問題演習システム,並びに英作文演習システムを設備備品費により購入したEWS上に試作した.
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