研究課題/領域番号 |
03247213
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
堀 素夫 成蹊大学, 工学部, 助手 (70029396)
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研究分担者 |
坂本 昇一 成蹊大学, 工学部, 助手 (80235176)
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研究期間 (年度) |
1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1991年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | マイクロクラスタ- / コンピュ-タ-シミュレ-ション / CarーParrinell法 |
研究概要 |
構成原子の数が数個〜数10個のマイクロクラスタ-では、構造や電子物性などの性質がバルクの状態とは異なる場合が多い。原子の数の増加させていくとき、どの程度のサイズになるとバルク的な性質を示すのかは興味のある問題である。また近年の技術の進歩により、実験的にも構成原子数が数個のクラスタ-を作製することが可能になっており、イオン化ポテンシャルなどの物性が測定されている。 このような背景を踏まえて、本研究では量子力学的分子動力学法によるシミュレ-ションにより、特にマイクロクラスタ-の金属ー非常金属転移に関して、構成原子の種類、構造、電子状態の関係を明らかにすることを目的とする。 マイクロクラスタ-の電子状態を計算する方法として、これまでは分子軌道法(MO法)を用いてきたが、この方法では分子軌道を各原子の位置座標R_iに依存するガウス型の基底関数で展開しているため、マイクロクラスタ-の安定構造や動力学を求めるのに必要な力ー∂E/∂R_i(Eは全エネルギ-)の計算が複雑になり原子数が数個のクラスタ-が限界であった。 電子の波動関数を平面波で展開すればこの力の計算は、局所的な基底を用いる場合に比べて簡単に行うことができる。平面波を用いるときは周期境界条件を考慮して、隣合うセルからのク-ロン力の影響が小さくなるようにある程度の大きさのセルの中にマイクロクラスタ-を入れてシミュレ-ションを行う。 特に1985年に提案されたCArーParrinello法(CP法)では、固有状態を求めるのにハミルトニアンを対角化するかわりに波動関数を古典的な物理量として時間発展させるもので、ハミルトニアンの配列を記憶する必要がなくなり、計算機のメモリ-を効率的に使用できる。さらにBornーOppenheimer近似により原子の運動の分子動力学(MD)シミュレ-ションと組み合わせて、各時刻の原子の位置座標に対する電子状態も求めることができる。 マイクロクラスタ-の金属性を判定するために、クラスタ-の全エネルギ-Etot、イオン化ポテンシャルEip、最高占有軌道(HOMO)と最低非占有軌道(LUMO)のエネルギ-レベルの差△εを求め、クラスタ-サイズNに対しプロットした。計算は実験室で作製されている原子のクラスタ-を選び、一価金属としてK、二価金属としてHgを用いた。 一価金属 ●原子はダイマ-を形成する傾向にあり、その結果1原子当りのEtotは、偶数個の原子で構成されるマイクロクラスタ-の方が奇数個のものより低かった。K_2の2個の価電子が比較的低いHOMOを占有しK_2を安定にするためである。 ●EtotおよびEipのN依存性は偶数のシリ-ズと奇数のシリ-ズにわかれた。これも上述の理由によるものである。 ●Eipと△εのふるまいからK_Nクラスタ-はN>3で金属的な性質を示す。 二価金属 ●Hg_Nクラスタ-は対称性の高い構造が安定になった。これはpー電子が隣の原子とボンドを形成し結合エネルギ-下げようとするためである。 ●EtotおよびEipのN依存性はK_Nのようなシリ-ズにわかれなかった。Hgダイマ-を作るような電子構造をしていないことによる。 ●Eipと△εのふるまいからHg_Nクラスタ-は20<N<30で非金属性性質から金属性を示す。
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