研究概要 |
1.セジメントトラップ実験(乗木,才野);研究の初年度にあたりこれまでの時間分画式のセジメントトラップを改良した.そして,(1)西部北太平洋高緯度海域での生物生産と化学成分の除去を観測するため,北緯45度,東経165度において5月の春期ブル-ム時に約20日間トラップ実験を実施し,沈降粒子試料を得た.粒子の90%以上がオパ-ル,炭酸カルシウムおよび有機物からなる生物起源物質であった.(2)沿岸域から日本海溝を越えて外洋に至る物質移動を考察するため,津軽沖の日本海溝をはさんだ東西に各1点のトラップを係留した.これらは平成4年度に回収する.(3)生物活動による物質の鉛直輸送量の差とその要因を調べるため,平成2年度に東経175度線の熱帯域に設置しておいたトラップ2系を本年度9月回収し,現在化学分析中である.また,同測線上の熱帯から亜寒帯に至る4点でトラップを設置し,平成4年度に回収する予定である.(4)東京湾を実験水域とする内湾から外洋への物質移動機構の解明ため,海水流動の活発な東京湾口の水深230m地点で係留系を設置し,全6層において沈降粒子を捕集した.中層の沈降粒子束は潮汐によって大きく変動していた. 2.海水中の溶存成分(中山,藤原,乗木);植物プランクトン生育に対する鉄制限仮説を明らかにするため,海水中の極微量鉄を正確に測定するルミノ-ル・過酸化水素発光法による分析法を確立した.燐の存在状態を分析化学的に検討した.海水中の銅の循環と生物学的役割を解明するため,試料汚染に注意した分析法を確立し,外洋水に適用した. 3.海底堆積物と間隙水(加藤);大陸斜面の海底境界層における物質循環像を明らかにするため,砒素を新生物元素のトレ-サ-として,間隙水及び堆積物中の濃度を測定した.その沿岸から外洋への水平的変動から,大陸斜面海底が元素の活発な循環場であることが判明した.
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