研究概要 |
近年、地球温暖化による気候変動が地球上の生態系に及ぼす影響についてさかんに議論されている。海洋の生態系のうちでも、一次生産に限ってみると、海面での二酸化炭素の吸収、酸素の放出に地球的規模で関わってくる。一方、海洋の鉛直方向にもプランクトンの死亡や、高次消費者による排せつ、死亡によって多くの「鉛直フラックス」が存在している。 本年度は、(1)3次元モデル(GFDL)を用いて、三陸沖をモデル海域として植物プランクトン、動物プランクトンを含めた生態系モデルを作成し、その性質(特にNew productionについて)を理解し、(2)暖水塊(以後、WCR)が存在した時について、Franks et al.(1986)を参照して、周辺海域との比較、鉛直2次元モデルとの比較をした。 結果として、(1)暖水塊中では、暖水塊のできたてでは、New Productionが大きいが、2〜3日経過すると周辺海域と大差なくなる(Franks et al.の結論と異なる)。(2)クロロフィル亜表層極大は、光の鉛直方向の減衰と、栄養塩の移流と、光合成のバランスの上に形成されるので、鉛直2次元モデルのみの見積りでは、かなり嘘臭い見積もりとなる。(3)したがって、今後は、(1)粒子化による炭素、窒素等の鉛直輸送や、沈降途中での分解を精密にモデル化する必要があり、(2)また、海洋中の渦の存在による鉛直循環を考慮する必要がある。【reference】Franks et al.(1986) J.G.R.91,c6,7603ー7610
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