研究概要 |
西部北太平洋の亜寒帯および亜熱帯海域において生産される有機物の組成を明らかにするため、東京大学海洋研究所「白鳳丸」の研究航海(KHー91ー3)に参加した。亜寒帯海域(45^0N,165^0E)の測点および亜熱帯海域(25^0N,165^0E)の測点において、 ^<13>Cトレ-サ-を用いた光合成実験を行い、以下の結果を得た。 1. 亜寒帯の測点では表面でのクロロフイルaの濃度は0.7μg.1^<-1>程度であり、30m〜50mまで同程度のクロロフイル濃度が観測された。しかし、有光層においても多量の硝酸塩が認められ、顕著なブル-ムは発達していなかった。亜熱帯海域の測点Bでは、50m以浅のクロロフィルaの濃度は0.05ー0.085μg1^<-1>と低い一方で、100m付近に亜表層クロロフイル極大がみられた。また、表層付近では栄養塩類はほとんど検出されず、極めて貧栄養的な状態にあった。 2. 水柱あたりの生産量を比較すると、亜寒帯海域では354〜374mgCm^<-2>d^<-1>、亜熱帯海域では227mgCm^<-2>d^<-1>と亜寒帯海域の生産量が亜熱帯海域の生産量の1.5倍程度であった。一方、クロロフィルaあたりの生産量は、亜熱帯海域の10ー30mにおいて60ー80μgCμgch1.a^<-1>d^<-1>と亜寒帯海域の測点に比べ4〜5倍の高い活性を示した。 3. 生産物中の脂質を構成する脂肪酸の組成について、ガスクロマトグラフおよびカスクロマトグラフ一質量分析計を用いて明らかにしたところ、両海域には顕著な違いが認められた。すなわち、亜寒帯海域で生産された脂質の脂肪酸では多不飽和脂肪酸(18:2、18:3、18:4、18:5、20:5、22:6)が大きい割合を占め、全脂肪酸の生産量の58%に達した、一方、亜熱帯海域では、飽和脂肪酸が全脂肪酸の生産量の87%を占め、不飽和脂肪酸の寄与は極めて小さかった。これは主として水温の違いを反映しているものと考えられる。
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