研究概要 |
本研究の目的は、大型真空装置を大気圧から10^<ー6>Paの超高真空領域迄排気する所要時間を短縮するための、手段を確立することである。排気の迅速性は、排気系の性能及び真空容器のガス放出特性とに関わるものであるが,本研究のような中程度の超高真空までの排気では、初期の段階の排気特性が重要と考えられるので,主に排気の初期に着目して試験を行なった。用いた排係系はタ-ボ分子ポンプを主体とする排気速度が400l/sのもの,試験容器は直径150mm、長さ1000mmのパイプである。排気の迅速性の目安としては、大気圧から5×10^<ー6>Pa迄の排気所要時間で表わすこととした。この目安は、排気系及び真空容器内面のガス放出特性の極限的な性能を表わすには不十分であるが、本研究の目的には極めて有効であり,試料に用いた各種の真空材料の特性,及び各種処理の効果をよく表わしていると判断される。試験したものは,sus316L材,真空溶解脱酸銅(クラス1)である。これらの材料の試験容器内面に、各種の処理を施してその効果を調べた。既に実施,あるいは予定している処理としては,(1)無処理,(2)二重真空炉(試料の内外ともに高真空〜超高真空迄排気した條件で加熱できる)によるベ-キング処理,(3)TiNコ-ティング処理(準備中)である。現在迄の結果は,以下の通りである。 1.二重真空炉でベ-キング処理をした後窒素でリ-クし,しかる後大気中で約1時間組立作業を行い排気したsus材は,無処理のものに比べて,排気時間は約1/2である。 2.二重真空炉でベ-キング処理をしたsus材の表面は、かなり活性であり、大気曝露による劣化は無処理のものに比べて、著しい。 3.大気曝露に先立ち,窒素ガスをリ-クさせるくとは、排気時間の短縮に効果が認められる。 表面のコ-ティングの効果については、これから調べる予定である。
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