研究概要 |
申請者らはこれまで,多面体の単眼画像に対し,各面が備えるべき幾何学的性質を,与えられた仮説の中から選択するといういわば記号論的な推論操作まで含めた物体形状認識を,正則化原理に基づく数理的評価によって可能とする計算論的手法の開発と計算機実現を進めてきたが,本年度は当重点領域研究の他のメンバ-との整合性を考慮に入れ,従来からの研究を発展させると同時に,生理・生体系研究との接点を求め,次のような成果を得た。 (1)画像に現れている面から構成される3次元形状に加えて,その結果から推測される裏面あるいは一部が隠された面の3次元形状まで含めた完全な物体形状の復元を試みた。その結果,これまでのエネルギ関数の記述において明確に分離せずに用いてきた物体形状に関する階層的な幾何学的概念である頂点,稜,面についての性質を,それぞれの概念階層内部および階層相互間で成立するものに分離して考慮する必要が生いた。このような条件を満足するエネルギ関数の記述法を開発し,相互結合型ニュ-ラルネットワ-クによって実現した。このことは相互結合型ニュ-ラルネットワ-クとル-ルベ-ス推論システムとの統合にも役立つことが判明しており,今後の発展の基盤をも与えるものである。 (2)錯視現象に関する考察とそのモデル化を目標とした考察では,入力画像デ-タと相互結合型ニュ-ラルネットワ-クのパラメ-タの設定値の与え方によって,種々の局所的最力解を与える事例の存在が明らかになった。これはネッカ-キュ-ブのような錯視現象の発生要因を部分的にせよ説明するものであり,その一つのモデルと考えられる。
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