研究概要 |
前年度は骨髄球系細胞分化の過程におけるcーfgrチロシンキナ-ゼの発現様式および活性を検討し、cーfgrチロシンキナ-ゼが骨髄球系細胞分化の初期過程よりも分化後期あるいは分化後に機能する可能性を示唆する成績を得た。今年度は成熟好中球におけるcーfgrチロシンキナ-ゼの役割について検討を行った。ヒト末梢血より分離した好中球を顆粒球コロニ-刺激因子(GーCSF)で刺激すると、5ー15分後に分子量100,85,70,55,42,30kdの蛋白のチロシンリン酸化の有意の上昇を認めた。ほぼ同様の時間経過でcーfgrチロシンキナ-ゼの活性化が認められ、GーCSFによる刺激伝達系にチロシンリン酸化およびcーfgrチロシンキナ-ゼが関与する可能性が強く示唆された。好中球を10分間GーCSFで処理した後、白血球走化因子FMLPで刺激するとチロシンリン酸化の著明な増強が認められた。またfMLPも好中球cーfgrチロシンキナ-ゼ活性化能を有することが判明した。このことからGーCSFとfMLP両者の刺激伝達系にcーfgrチロシンキナ-ゼを介した共通の経路が存在すること、および従来知られていたfMLPによる好中球活性化におよぼすGーCSFのプライミング効果にこの経路が関与する可能性が示唆された。チロシンキナ-ゼ抑制剤であるハ-ビマイシンAで好中球を処理するとGーCSF/fMLPによるス-パオキサイド産生が著明に抑制され、このこともこれらの見解を支持するものとなった。またGーCSF処理後5ー15分でcーfgrチロシンキナ-ゼ自身のチロシンリン酸化の程度が著明に減少していることが判明した。このことは好中球における,cーfgrチロシンキナ-ゼ活性化にチロシンフォスファタ-ゼが関与することを示唆した。
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