研究概要 |
Abelsonマウス白血病ウイルス(AーMuLV)温度感受性変異株にて確立した胎児胸腺由来幼宿造血細胞株C10ー7,42はILー1刺激にてIーA^-Mφ中に分化し、T細胞の増殖を支持する。新たに確立した分化前のC10ー7に対するモノクロナル抗体を3Fー7A1を用い、上記細胞の正常組織でのcounterpartの存在を検討した。胎生期胸腺ではCD4^-CD8^-細胞群の3Fー7AI陽性細胞の頻度は胎生14,15ー16,17日でそれぞれ3.3,0.6,0.2%と急激に減少し成熟胸腺では認められなかった。これらの細胞群は比較的大きい芽球様細胞であることも示唆された。胎生期の主要な造血組織である肝組織における3Fー7AI陽性細胞の頻度は胎生14,15ー16,17日で0.5,0.1,1.6%と胎生15ー16日で一過生の減少が観察された。胎生14日胸腺では肝蔵より6.6倍多い事実はこの時期の胸腺中CD4^-CD8^-3F7ーAI^+群が血流を介して各組織に均等に分布しているものでないことを示唆する。一方県リンパ球胸腺へのクロ-ン42の移入により形態的にマスト様細胞が産生された。この細胞を株化し性状をFcεRI遺伝子発現にて解析した。その結果FCεRIβ鎖遺伝子の発現が認められ機能的にもマスト細胞であることが確認された。一方AーMuLVproviral DNAの解析結果より得られたマスト細胞株はAーMuLVによって株化されたことが判明したものの親株である42とは異なるproviral DNAの挿入部位を有しコピ-数の減少も認められた。この結果42が分化する過程でproviral DNAが欠失し新たに挿入されたのか、無リンパ球胸腺作製過程中に残留したマスト細胞あるいはその前駆細胞が42の産生するAーMuLVにより株化されたのか杏かにつき今後検討する必要が残された。細胞株レベルで観察された胎児胸腺非リンパ球前駆細胞活性の生理学的意義に関する検討が必要であるが3Fー7AI抗体を用いた解析より絶対数そのものが非常に少数であることが推察され単離精製にはCD4^-CD8^-3F7ーAI^+細胞群の成長因子等の検討を含めて新たな工夫が必要であると考えられた。
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